想いの上に、「知識と技術」をつけよう。

レッスン中にふと、子どもの眼差しが変わった気がした。

小学生だけれど、手加減せずに先を見据えて教えていることに気づいたからだろう。


小学生を教えるとき、よく「かわいかったです」「小学生なのに一生懸命頑張っていてすごいですね」と言って下さる指導者は少なくない。

かくいう私も小学生で楽器を始めたことがなかったので、指導当初はどれくらいのレベルを目指すのがいいのか明確ではなかったため、同じような印象を持っていた。


それから5年間、小学生を指導する活動に携わった中で発見したことは、指導者が「音楽に対して考える力」を教え、練習に向かう姿勢を丁寧に導くことで、子どもには無限の可能性が秘められているということだ。

勿論、本人が望む目標に向かって指導していくのだが、私が受け持っている小学生の生徒さんは具体的に「10年後も私は楽器を続けている・いつか岐阜県を盛り上げるプレイヤー・指導者になりたい」そんな明確な目標を持っている。

こんなに嬉しいことがあるだろうか。素晴らしい限りだ。



過去の自分に重ねながら問い掛ける。


「あなたは上手くなりたい?」-「はい、上手くなりたいです」


「その想いはとても素晴らしい。大切なことだ。…では、少し例え話をしよう。極論だけれど、目の前にとても体調が悪い人がいたとする。とても大好きな人だ。その人が苦しんでいる。それを助けたいと思う。だけれど”治って欲しい、元気になって欲しい”そんな想いだけで、人は救えるかい?」-「…助けられません」


「そうだね。どんな症状で苦しんでいるか、どの病院へ、どの科へ連れて行くべきか、自分に今できる対処法は何か、どんな薬を渡してあげるといいのか、考えること・できることがある。大好きな想いだけで人は救えない。」-「…」


「想いだけでどうにもならないことは世の中にたくさんある。これから、色々なことが想いだけでは成り立って行かなくなる。だから、それに見合う”知識”と”技術”をつけていこう。」


「音楽もきっと一緒だ。大好きな気持ちを大切に、そしてその上で、これから確かなものに触れて、見て、手にしていこう。」


彼女は真剣な眼差しで、まっすぐ私の方を見ていた。




「でもね、音楽を大好きな気持ちを、今楽しいと思う、大好きなこの瞬間をいつまでも忘れないで。」


そう言うと彼女は、いつも通りニーッと笑った。


青は藍より出でて藍より青し。


いつか、たくさんの教え子たちが、10年後に素晴らしいプレイヤー・指導者になって帰ってくることを、楽しみにしている。

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コメント: 1
  • #1

    神吉信明 (日曜日, 05 4月 2015 04:18)

    いえい♪

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